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空飛ぶ大鍋ストリカ
『竈番がさらわれて、鍋は具材を締め切った!
命がこぼれ落ち、慈愛は首を吊り、焦げ目が淵からあふれ出て
――今は、微かな祈りが鍋を支えている』
ストリカは、数多の霊魂――スープを煮た大鍋の形をしている。
大鍋は原書の炎に焼かれ、いつでも虚無に向かって飛んでいこうとする。
ストリカの六柱の神々は、鍋が飛んでいかぬよう鍋が傾かぬよう大鍋の縁に留まっている。
ストリカに流れる霊魂の総量は決まっており、生命が亡くなればその霊魂は元のスープに戻り、六柱のうちの一柱竈の神クロビスが鍋の中をかき混ぜ、輪廻して別の生命となり紡いでいた。
しかし。
50年前の失われた日。
銀の船へ旅行に行っていた、次世代の竈の神が突然失踪する。
前の竈の神は長い任期を終え、すでに霊魂へと姿を変えていた。
霊魂は戻る場所を失い、軽くなった鍋は飛び立とうとし、
――生命から、寿命が失われた。
世界を嘆いた慈愛の神ユーリアは、
首を吊り自らを生贄に鍋の傾きを修正した。
銀の船の竜は、
空いてしまった鍋の縁に舞い降り鍋を鎮めた。
ストリカは、天変地異重なる混沌を迎える。
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- 最終更新:2015-09-27 05:28:42